前操作期の直感的思考段階への異論

まずは定説から、ここでは「前操作期(preoperational period)とは!?」を引用します。出展:http://psychjapan.com/286.html

グレー表示は象徴機能に関することなので、読み飛ばしてください。


直観的思考段階とは!?
これは,思考が心的イメージによって行われます。

そしてカテゴリーを伴う概念的な思考が可能となります。

しかし,事象に対する知覚(視覚的情報など)に左右されやすいという限界も持っています。

このために,同じ体積の粘土でも,球体にたっているものと,楕円状になっているものでは楕円状になっているものの方が体積が大きいと認識してしまうことになります。

前操作期最大の特徴である象徴機能(symbolic function)とは!?
一方で,感覚-運動期を経て獲得された対象の永続性や表象能力を基礎として,「象徴機能(symbolic function)」が獲得されていくことが大きな特徴でもあります。

象徴機能とは,ある事物を他の事物で表すことを言います。

これが可能となることによって,目の前にはない活動ができたり,ある役割になりきって行動することができるようになります。

活動内容が特定されたものである場合には,「ごっこ遊び」と呼ばれるものになります。

たとえば,「おままごと」はごっこ遊びの代表例ですが,これは目の前にない食べ物を食べる仕草や家庭内のある役割になりきって活動することが求められています。

このように,象徴機能によって目の前にないものを再生することが可能となってくるのです。

まとめ
ここまで「ピアジェの発達理論」について,前操作期における2つの下位段階や象徴機能についてお話してきました。

前操作期象徴機能が成立するということが,最大の特徴であると言えます。

この象徴機能によって,心的イメージによる思考が可能となるのです。

そして,より抽象的な共通点を導き出せるようになり概念的思考が成立するのが,4歳前後であるとされているようです。

直観的思考段階に知覚情報に左右されやすいことをお話しましたが,次第にひとつの知覚のみではなく,複数の知覚情報によって反応を修正しようとする直観的調整作用がはたらくようになります。

たとえば,丸い粘土をどんどん細長くしていくと,ある長さまでは,「長いほうが大きい」という情報にひっぱられて,丸いものより長いものの方が体積が大きいと考える傾向にあるようです。

しかし,ある長さ以上になると「細い方が小さい」という情報によって,長いけれども細いので丸いほうが大きいと考えを修正することがあるのです。

直観的思考についてですが、質問のしかたに問題があるかもしれません。「大きいのはどちら?」と聞いた場合、より面積が大きいとか散らばっているという状態を「大きい」と表現している可能性はないでしょうか。やや大きさの違う2本のバナナを並べて、「大きいのはどちら?」と質問した直後に、小さいほうを切って拡げて並べ、再度「大きいのはどちら?」と質問するなどの工夫が必要なようにも思います。このとき切って広げたほうを「大きい」と答えたら、直感的思考の仮説を支持することになりますね。

ということでやってみました。

2歳2ヶ月の男子です。1歳6ヶ月頃から発語が見られ、この当時は3つの動詞を使った複文を話せました。

まずはバナナの大小を判断させました。これは成功。

つぎに、切って拡げたところ、切っていないほうを「大きい」と表現しました。視覚情報に左右されず、量の保存を理解しているようです。

視覚情報に左右された結果として、延ばした粘土を「大きくなった」と表現するのではなく、適切な語彙を未獲得なためそのような表現をするのではないでしょうか。前操作期の子どもは語彙の獲得、使用領域の未分化のため、視覚情報に対して適切な語彙をあてることができないことがある。と結論付けてはいかがでしょうか。

一方で、弊社の「認知発達テスト」で、小学5年生の児童に、つぶした粘土を水に入れる課題をさせたところ、もとより少ない水位を書き入れた事例も多く見られました。この回答は描画によるものなので、語彙の依存を受けません。また定型発達の児童なので、語彙も適切に獲得しているはずです。しかし、水位は低い。この児童に実物を使ったワークショップを実施したところ「あ、いっしょだ・・・」と実感していました。

この事例を見ると、先の直感的思考がまだ残っていたとも考えられます。

あわせて考えると、前操作期の子どもは視覚情報に左右されて、量を誤って認識する場合もあるが、語彙の未発達のため認識と違う表現をしてしまう場合がある。というのはどうでしょうか。

松居稔

これは,脱中心化(decentering)というものが関係しています。

そして,次の具体的操作期の準備段階としての時期であるとされています。

出展:http://psychjapan.com/286.html